2004年7月25日
合言葉はTRUST! - ボツワナ・ザンビア・モザンビーク・スワジランドの旅 -
3年越しの念願であったアフリカ行き、2004年7月13日から25日まで、日・AU議連と青年海外協力隊等人的国際貢献に関する小委員会(事務局長を務めさせていただいている)の視察団として松下忠洋団長の下、森岡正宏衆議院議員、福井照衆議院議員(ボツワナのみ)、外務省川田氏、JICA中原氏と共に南アフリカ、ボツワナ・ザンビア・モザンビーク・スワジランドを訪問した。
先ず初めに、大変な強行日程にもかかわらずそれぞれの国において大統領を始めとする要人との会見のセッティング、また青年海外協力隊を始めとする現場視察、意見交換等のセッティング他大変ご苦労頂いた各国駐在の大使、外務省、JICA他関係者の皆様に心より感謝を申し上げたい。お陰様で2週間、どの1日をとっても1日はおろか一時の無駄な時間もなく実に充実した毎日を送ることが出来た。
さて、何から先ず述べていいか困ってしまうほど今回の旅はあふれんばかりの様々な思い ―喜び、今後の期待・課題まで― 胸一杯に詰め込んで帰ってきた旅となった。私にとっては初めてと言っていい(これまでエジプトしか行った事がない)アフリカの大地への旅で、先ず一ついえることは、本当に行く前と帰国後の今とでは印象が全く違うということ、そして「アフリカ」と一口に言ってもそれぞれ国ごとにおかれている状況は全く違い、これも一つ一つ訪れ、見てみないと、行って見ないとわからない事ばかりでありアフリカの奥深さを感じた。
そこで、所感を項目別に以下に整理して述べさせていただく。
青年海外協力隊を始めとするJICAの取り組みについて
現在ボツワナにて31名(SV5名)、ザンビアにて55名(SV10名)、モザンビークにて9名(スワジランドは現在要請を受け検討中)の青年海外協力隊が派遣中であり、それぞれの国において活動の現場視察や多くの隊員との交流を持つ事が出来た。また、各国において大臣等から彼らに対しての高い評価、謝辞を頂く事ができ、モザンビークにおいてはシサノ大統領より、ぜひ近いうちに隊員たちに会い意見を聞きたいとのお言葉までいただいた。
隊員たちはそれぞれ奥深い現場まで入り込んで現地の人々に溶け込み、悩み考えながらも力を尽くしている様子が伝わってきた。他国の支援に比べ、上から物申すのではなく、一人一人がその国の人たちと一緒になって働くその姿勢が現地の人からの信頼と共感を呼んでいるようであった。彼らのまさに草の根の支援こそが我が国の国際貢献の足腰となっているということを強く感じた。
また、今回、広島大学大学院の講座の一環として、協力隊参加による単位取得という新たな試みにより、現地に滞在する広大の学生さんたちにも会うことが出来た。JICAとタイアップして協力隊として働く活動を研究として評価するという広大の取り組みに感謝したい。実際に現地で働くことにおいては想像以上に大変であると思われるが、JICA側のフォローアップも含めて今後の活動を見守っていきたいと思う。(できれば他大学にも広げていきたい)
3カ国においての協力隊へのニーズは多種多様であり、一人一人に決断と責任が要求されている。よく言えば自分の仕事を工夫し、発展させる事もできるが、生活に慣れるだけでも時間のかかるアフリカの地において2年間という時間はとても短い。雲をつかむような所もあり、フラストレーションがたまることも多いのではないかと思う。一つのプロジェクトを2代、3代と積み重ねて発展させてきたような分野は仕事がしやすいようにも見えたが、新たなニーズが発生しているのも確かであった。彼らの意見で印象的だったのは「自分達は好きで来ているのだ」と笑顔で言っていた事。とても若者らしいさわやかな責任感を感じた。また、大変な事はないかと聞くと「どこでも一緒です。日本でも大変な事はあるし、いい人も嫌な人もいます。」と言われてしまった。頼もしい限りである。そんな協力隊員に私たちは「あなた方を誇りに思う。あなた方は日本国の国際貢献の一翼をしっかりと担っている」とメッセージを伝えてきた。各国から協力隊のような人的支援は確実に求められていること、それに答えるための努力を尽くしている協力隊員の姿に、一人の人間の力とはなんと大きなものであるかということを実感した。
ODA等日本の支援の現状とこれから
各国よりこれまでの日本からの優れた技術、様々なインフラ整備支援に対する良い評価と御礼があった。しかし、どこの国においてもまだまだインフラ整備は充分ではなく、更なる日本の支援に対する期待を寄せられた。
ボツワナにおいての飛行場まで続く道路、ザンビアの小中学校、スワジランドの小学校などどれも有効に使われていることを実感した。将来的には大規模な橋の建設など大きな課題はあると思うが、数百万円の単位でできる事業も沢山あり、その国ごとニーズはどこにあるのかを見極めた迅速かつ柔軟な対応とお金の使い方が今まで以上にきめ細かくできればと思う。
アメリカ、ヨーロッパを始めとする多くの国々がアフリカ支援に手を挙げている中、これまで日本がアジアや他国に対して支援してきた方法とはまた別の「アフリカのニーズに合致する日本らしい支援」とは何なのか。ある程度テーマを絞り優先順位をつけていくこともこれからの検討課題であると思う。
また、スワジランドにおいてはJICAによる研修生制度により1〜2ヶ月の研修(農業・情報・衛生等)を日本で行ったスワジランド人の懇親会に出席した。誰もが日本に対し良いイメージを持ち、日本で学んだ事を母国で活かそうと懸命であった。彼らは今後共日本とスワジランドを結ぶ素晴らしい架け橋になってくれると思う。こうした人的交流により将来的にも2つの国の友好関係が更に発展していく事を感じることができる取り組みだと思った。
そして最後に一つ。4カ国を通じてアフリカ全土の大きな問題と言えるのがHIV/AIDSのことだ。感染率はボツワナにおいて約37%、ザンビアでは約16%、平均寿命は約40歳という具合であり切実な状況である。いくら人材育成をしても働き盛りの若者が急に亡くなったり、また、ザンビアのカシシの家においてはここ10年の内に100人の子供が亡くなっている。これからのこの国を担っていく若者たち、また国の宝である子どもたちがHIV/AIDSに冒され亡くなっていく現状を目の当たりにし、私たちはショックを隠しきれなかった。何かしてあげたい。しかしいったい何ができるのであろう。
これまでも日本は草の根や無償資金により、技術等の協力をしてきている。しかし抜本的解決のためには、女性の地位向上を始め、意識改革を喚起する教育の改革が大切である。HIV/AIDSの問題の大きさに愕然としつつも、日本に何ができるのか、今後も引き続き解決策、支援策を探っていきたい。
要人表敬
各国とも大統領・大臣を始めとする多くの要人に表敬でき、松下団長よりTICADIIIへの出席に対する御礼、11月のTICADアジア、アフリカ貿易投資会議への参加をお願いした。
また、4ヶ国すべてにおいて2004年の国連安保理非常任理事国選挙に対して大変好意的に日本への支持をご示唆頂いた。いずれの国においても政治の安定が今後の経済的な発展に欠かせない事を実感しており、特にモザンビークにおいては政治によって何事も平和的に解決を見出す事の重要性をとくとくと述べていたのが印象的だった。12月には大統領選挙と総選挙が行われる予定。結果を見守りたい。またスワジランドにおいては現在憲法の草案ができたところであり、いかにして国民の意見を反映させるか、すべての国民が参加できるような憲法を今年中には完成・実施させたいとのことであった。
まとめ
松下団長のもと、これまで多くの先輩の方々が築いてきた日本・アフリカの信頼関係を実感し、それを更に発展させる事ができた旅になったと確信する。松下団長の愛のある外交手腕を間近で勉強し、“信は国境を越える”ということを学んだ、今回の旅の合言葉は“TRUST”であった。今後もこの気持を胸に抱きつつ微力ながら日本、AUの友好関係に尽力していきたいと思う。